特殊伐採に必要な資格とは?保有資格や依頼時の確認ポイントを解説

高木や大木、住宅のすぐ近くにある木などを安全に切るために行われる「特殊伐採」。

ロープを使って木に登ったり、枝や幹を吊り下ろしたりする作業を見ると、「特殊伐採をするには特別な資格が必要なの?」と疑問に思う方もいるでしょう。

結論からいうと、「特殊伐採士」という名称の国家資格があり、その資格がなければ特殊伐採ができない、という制度ではありません。

一方、業務としてチェーンソーを使って伐木作業を行う場合には「伐木等の業務に係る特別教育」が必要です。また、高所作業車やクレーンなどを使用する場合には、機械の種類や作業内容に応じた資格・技能講習・特別教育などが必要になります。
厚生労働省もチェーンソーによる伐木作業を危険・有害業務として、作業者への特別教育を義務付けています。

さらに特殊伐採では、資格を持っているだけでなく、ロープワークや樹木に関する知識、現場経験、安全管理能力も重要です。

この記事では、特殊伐採に関係する資格や特別教育、業者へ依頼するときに確認したいポイントについて解説します。

特殊伐採に資格は必要?

まず知っておきたいのが、特殊伐採そのものを対象とした一つの必須国家資格があるわけではないということです。

特殊伐採では、現場によって、チェーンソー、ロープ、高所作業車、クレーン、ウインチなど、さまざまな道具や機械を使用します。

そのため、実際に使用する機械や担当する作業に応じて、必要となる資格や教育が変わります。

特に基本となるのが、チェーンソーを使用した伐木作業に関する特別教育です。

特殊伐採に関係する主な資格・特別教育

伐木等の業務に係る特別教育

特殊伐採でチェーンソーを使用する場合に重要なのが、「伐木等の業務に係る特別教育」です。

労働安全衛生法令では、事業者が労働者をチェーンソーによる立木の伐木、かかり木の処理、造材などの業務に就かせる場合、特別教育を行うことが求められています。

現在の教育内容は、学科9時間・実技9時間の計18時間が基本です。

学科では、

・伐木作業に関する知識
・チェーンソーに関する知識
・振動障害とその予防
・関係法令

などを学び、実技では伐木方法やチェーンソーの操作・点検などを学びます。

つまり、単に「チェーンソーを使った経験がある」というだけではなく、業務として作業する場合には安全に使用するための教育が必要ということです。

フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育

特殊伐採では、高所で作業することがあります。

作業条件によってフルハーネス型墜落制止用器具を使用する業務では、対象となる作業者に特別教育が必要になります。

木の上でチェーンソーを扱う特殊伐採では、地上での伐採以上に墜落防止を考えなければなりません。

そのため業者を確認するときには、チェーンソーだけでなく、高所作業に関する安全教育を受けているかも一つの判断材料になります。

高所作業車運転技能講習・特別教育

特殊伐採では、木へ直接登るのではなく高所作業車を使用する場合もあります。

高所作業車については作業床の高さによって必要な教育・資格が異なり、一定以上の高さの機械を運転する場合には技能講習の修了が必要です。

労働局が公開している講習一覧でも、高所作業車運転技能講習は法令に基づく技能講習として実施されています。

高所作業車を使えば必ず安全というわけではなく、適切な資格を持った作業者が正しく操作することが重要です。

小型移動式クレーン運転技能講習

大木の特殊伐採では、クレーンで枝や幹を吊りながら切断することがあります。

重量のある幹をそのまま落とせない住宅密集地などで使われる方法です。

使用するクレーンの種類や能力などによって必要な資格は異なりますが、小型移動式クレーンを扱う場合には技能講習が必要になるケースがあります。労働局でも法令に基づく技能講習として実施されています。

玉掛け技能講習

クレーンを使用して切断した枝や幹を吊り上げる場合には、「玉掛け」が必要になることがあります。

玉掛けとは、荷物をクレーンのフックなどへ掛けたり外したりする作業です。

大きな幹は非常に重量があるため、吊る位置や方法を誤れば重大な事故につながります。

そのため特殊伐採では、チェーンソーを扱う技術だけでなく、使用する重機や吊り作業についての知識も必要になります。

「アーボリスト」の資格とは?

特殊伐採について調べていると、「アーボリスト」という言葉を目にすることがあります。

アーボリストとは、樹木の管理や高所での樹上作業などに専門的な知識・技術を持つ人を指す言葉です。

海外にはISA(International Society of Arboriculture)の認定制度などがあり、日本でも樹木管理やツリークライミングに関する民間資格・認定制度があります。

ただし、アーボリストの民間資格を持っていなければ日本で特殊伐採ができない、というわけではありません。

特殊伐採業者を見る際には、「資格名があるか」だけではなく、

「どのような教育を受けているか」
「どれだけ特殊伐採の経験があるか」
「どのような現場へ対応してきたか」

まで確認することが重要です。

特殊伐採は資格だけでは判断できない

特殊伐採は、同じ高さ・太さの木でも現場によって難易度が大きく変わります。

例えば、「住宅まで数十センチしかない」「電線の間に枝が伸びている」「急斜面で高所作業車が入れない」「幹内部が腐っている」といった現場では、それぞれ異なる判断が求められます。

さらに木へ登る場合には、作業者自身が荷重をかけても安全な枝や幹なのかを判断する能力も必要です。

厚生労働省のチェーンソー作業に関するガイドラインでも、伐倒方向や退避方法、立入禁止範囲など、作業前の安全確認が重視されています。

そのため特殊伐採では、資格の数だけを見るのではなく、資格・知識・経験・安全管理を総合的に確認することが大切です。

特殊伐採を依頼するときに確認したいポイント

特殊伐採を業者へ依頼する場合、「資格を持っていますか?」だけで判断するのは十分ではありません。

資格や教育に加えて、施工経験や安全対策、現場に合わせた作業方法を確認することが重要です。

作業に必要な資格・教育を受けているか

まず確認したいのが、実際に行う作業に必要な資格や特別教育です。

特殊伐採では現場によって、

・伐木等の業務に係る特別教育
・フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育
・高所作業車運転技能講習・特別教育
・小型移動式クレーン運転技能講習
・玉掛け技能講習

などが関係します。

例えばチェーンソーによる伐木等の業務については、法令に基づく特別教育が定められています。

ただし、必要となる資格・教育は作業内容や使用する機械によって異なります。

「資格をいくつ持っているか」ではなく、その現場で必要な資格・教育を受けた人が作業するかを確認しましょう。

特殊伐採の施工実績があるか

特殊伐採では、資格と同じくらい現場経験も重要です。

例えば、「住宅の真横にある20mの木」「電線に枝が絡んでいる木」「急斜面にある枯れ木」では、それぞれ作業条件が異なります。

ロープで枝を吊る場合も、枝の重量や重心を考えながら切断位置やロープの位置を判断しなければなりません。

そのため、自分が依頼したい現場と似た施工実績があるかを確認するのがおすすめです。

現地調査をして作業方法を決めているか

特殊伐採では、木の写真だけで安全な作業方法を決められない場合があります。

現地では、

・樹高や幹の太さ
・木の傾き
・枯れや腐朽
・住宅との距離
・電線の位置
・重機の搬入経路
・枝や幹を下ろすスペース

などを確認します。

そのうえで、ロープで対応するのか、高所作業車やクレーンを使用するのかを判断します。

現場を確認したうえで具体的な施工方法を説明してくれる業者を選ぶことも大切です。

特殊伐採では安全対策も重要

高所でチェーンソーを使用する特殊伐採では、墜落や落下物などへの安全対策が欠かせません。

高所からの墜落を防ぐ

木に登って作業する場合には、適切なロープや墜落制止用器具などを使用して作業者の安全を確保します。

なお、フルハーネス型墜落制止用器具に関する特別教育が法令上必要となるのは、高さ2m以上で作業床を設けることが困難な場所において、フルハーネス型を使用して行う対象業務です。

特殊伐採では高所での作業が多いため、こうした安全対策について確認することも業者選びのポイントになります。

枝や幹の落下をコントロールする

住宅の近くでは、切断した枝をそのまま地面へ落とせない場合があります。

そこでロープを使用して枝や幹を吊り、地上の作業者と連携しながら安全な場所へ下ろします。

クレーンを使用する現場では、作業内容に応じて移動式クレーンや玉掛けに関する資格も必要になります。厚生労働省の資料でも、一定の移動式クレーンの運転や玉掛けには技能講習などが必要とされています。

資格だけで特殊伐採業者を選ばないことが重要

特殊伐採業者を選ぶ際には、保有資格を確認することは大切です。

しかし、「資格が多い=どんな特殊伐採でも安全にできる」とは限りません。

特殊伐採では、

資格・安全教育
樹木についての知識
・ロープワークの技術
特殊伐採の施工経験
現場に応じた判断力

などが組み合わさって初めて、安全な作業につながります。

特に腐朽した危険木では、作業者が登ることで幹や枝が破損する可能性も考えなければなりません。

「どんな資格を持っているか」と「その資格や技術を実際の現場でどう活用しているか」の両方を見ることがポイントです。

特殊伐採の資格に関するよくある質問

特殊伐採には国家資格が必要ですか?

「特殊伐採士」という一つの国家資格があり、それがなければ特殊伐採ができないという仕組みではありません。

ただし、チェーンソーや高所作業車などを業務で使用する際には、作業内容に応じた特別教育や技能講習などが必要になります。

チェーンソーは誰でも仕事で使えますか?

労働者が業務としてチェーンソーによる伐木等を行う場合、事業者には対象者への「伐木等の業務に係る特別教育」が求められます。

教育は学科と実技で構成されています。

アーボリスト資格があれば安心ですか?

専門知識や技術を確認する一つの材料にはなりますが、資格だけで判断するのはおすすめできません。

特殊伐採の施工実績や安全管理、現場への対応力なども合わせて確認しましょう。

まとめ|特殊伐採は資格と経験の両方を確認しよう

特殊伐採には、「この資格を一つ取得すればすべての作業ができる」という単一の国家資格があるわけではありません。

実際には、使用する機械や作業内容によって、チェーンソー、高所作業車、クレーン、玉掛け、高所作業などに関する資格・特別教育が関係します。

そして、特殊伐採で重要なのは資格だけではありません。

樹木の状態を判断する知識、ロープワーク、施工経験、安全管理まで含めて業者を選ぶことが大切です。

住宅や電線の近くにある高木など、通常の方法では伐採が難しい木を依頼するときは、保有資格だけでなく、似た現場での施工実績や具体的な作業方法まで確認してから依頼しましょう。

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